涼宮ハルヒの喪失〜10years after〜

 

1 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/22(金) 23:39:40.03 ID:GxH6TDNP0


午前6時。午前6時5分にセットしていた目覚まし時計が鳴る少し前に目を覚ます。
昔は誰かに起こされても1度では起きれなかった。
それが今では5時間ほどしか寝ていなくても、こうして6時には目が覚めてしまう。
習慣とは恐ろしいものだ。
どんなに辛いことでも日々繰り返していく中でそれは習慣となっていく。
朝起きれなかった俺が目覚まし時計より早く目が覚めるように。
あいつのいないこの生活にも少しずつ順応してきているように。

 

4 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/22(金) 23:40:48.60 ID:GxH6TDNP0


人はどんなに辛いことでも慣れてしまう。そしていつかその辛さすら忘れてしまう。
日々を生きていくために。俺もいつか習慣として忘れてしまうのだろうか。
あいつを亡くした時のあの悲しみも。それはとても寂しいこと様に思えた。
なぁハルヒ…おまえはどう思う?帰ってくる答えは無い。当たり前だ。
もうハルヒはいないのだから。

 

5 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/22(金) 23:41:33.25 ID:GxH6TDNP0

午前7時。二人分の弁当と朝御飯を作り終えた俺は我が家のお姫様の寝所へと向かう。
我が家の姫は誰に似たのか寝起きが悪い。
だから俺がこうして毎朝起こしにいかなければいけないのだ。
キョン「千春。朝だよ。起きなくちゃ幼稚園に遅れるしご飯も冷めちゃうぞ。」
千春「う〜ん…」
起きない。昨日も9時には寝ていたのにな。
幸せそうな寝顔を見ているとなんだか起こすことが悪いことのように思えてくる。
だが起こさねばならない。でなければ千春が幼稚園に遅刻してしまう。
なので俺は少し荒っぽい方法に出た。

 

6 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/22(金) 23:43:34.42 ID:GxH6TDNP0

キョン「千春〜!!起きろ〜〜〜〜!!」
千春の脇に手をいれくすぐる。
千春「お父さんwwwwやめてwwww起きるからwwww」
すると千春が声を出して笑いだす。ハルヒによく似たその顔が少し苦しそうに歪む。
キョン「はい。千春おはよう。」
千春「おはよう!お父さん。」
俺の挨拶に千春が笑顔で答える。笑った顔なんかは本当にハルヒそっくりだ。

 

7 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/22(金) 23:44:49.49 ID:GxH6TDNP0

午前7時10分。千春の朝の準備を終え二人でテーブルに向かい合いに座る。
キョン「はい。手を合わせて。」
キョン・千春「「いただきま〜す!!」」
今日の朝御飯は白米に卵焼きに味噌汁といった典型的な和風朝ごはんだ。
まぁ「今日の」と言ってもこのメニューは我が家の朝ごはんの鉄板であり変わることはほとんど無い。
二人分の朝ごはんと弁当を作るのも最初は苦戦していた。
卵焼きがスクランブルエッグになったり、味噌汁をだしもとらずに作ろうとしたりと
自分があまりにも家事が苦手であることに絶望したもんだ。
だがいくら苦手でも5年もやり続ければ随分と様になってきたと自負している。

 

8 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/22(金) 23:45:53.00 ID:GxH6TDNP0

千春「お父さん。今日幼稚園でねみんなでお絵かきするんだよ。」
キョン「そうか。千春はどんな絵を描きたい?」
千春「え?え〜とね…う〜んとね…」
千春が少し頭を傾げながら悩みだす。そんな真剣に考えなくてもいいのに。
千春のそんな姿を見ているとついつい笑顔になってしまう。
千春「千春お父さん描く!!」
キョン「え?」
千春が突然大きな声でそんなことを言うのでつい俺は素っ頓狂な返事をしてしまう。
千春「だ〜か〜ら〜。今日のお絵かきで千春お父さんの絵描きたい!!」
…なんて可愛らしいことをいうんだ。うちのお姫様は俺の心が読めているのだろうか?
そうでなければこんなにも俺の心を掴む発言ができるわけがない。
朝っぱらから少し泣きそうになってしまった。

 

9 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/22(金) 23:46:48.50 ID:GxH6TDNP0

千春「それでね。千春が描いた絵お父さんに1番最初に見せてあげる。約束だよ!」
キョン「あぁ!父さんも絶対に千春の絵を最初に見るぞ!約束だ!」
千春「うん!約束!約束!」
いつまでもこうして千春と話していたいが俺にも千春にもそんな時間的余裕はない。
キョン「じゃあ早く朝ごはん食べちゃおう。でないと幼稚園に遅れちゃうぞ。」
千春「うん!」
そういう俺も急がなくちゃな。千春の幼稚園の準備もあるし、燃えるゴミの日だし、
それに何より今日は月曜日だからな…。親子二人で朝からご飯を少し急ぎながら食べる。

 

10 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/22(金) 23:47:56.89 ID:GxH6TDNP0

午前7時45分。千春と俺は二人で和室に向かう。
だが和室に用があるわけではない。和室にいるあいつに用があるのだ。
千春「お母さん。今日もおはよう。千春とお父さんはね今日も元気だよ!」
キョン「おはよう。ハルヒ。」
仏壇の前に二人で座り、手を合わせる。週の初めである月曜の朝。
俺と千春は仏壇の前で黙祷する。
昔は毎日こうしていたのだが、俺が本採用になったり、千春が幼稚園に通いだすようになったり何かと忙しくなった。だから週1度、週の始まりの朝だけに黙祷することにした。
これだけはどんなに仕事が忙しくても欠かしたことはない。絶対にだ。
そうしなければ俺はいつか日々の忙しさの中でハルヒのことを忘れてしまうかもしれない。
そう思ってしまう自分が嫌で怖かった。

 

11 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/22(金) 23:49:22.42 ID:GxH6TDNP0


キョン「今週も俺と千春が元気で笑って過ごせるように。お願いします。」
千春「おねがいします。」
いつものお願いをハルヒにする。お願いというよりも誓いだ。毎週俺はハルヒの前で誓う。
絶対に千春を悲しませない、お前がいなくても笑って生きていくよ、と。
そうすれば俺は頑張れる。俺がハルヒとの誓いを破れるわけがない。
なぜなら団長命令は絶対だからな。

 

13 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/22(金) 23:51:26.35 ID:GxH6TDNP0


午前8時15分。千春を幼稚園に送ってから俺は職場へと歩を進めた。
この馬鹿みたいに長い坂も高校3年間と働き出してから5年間。
大学4年間というブランクがあるものも、8年間ほぼ毎朝この坂を登っていることになる。高校時代にこの坂に対して抱いていた恨めしい気持ちも今ではなりを潜めている。
むしろ愛着が湧いているくらいだ。
この坂から見える俺と千春が暮らすこの街の景色を俺はとても気に入っている。
女生徒「先生。おはよう〜。」
キョン「あぁ。おはよう。」
今の俺は北高の教師をしている。教科担当は現代国語。現1−4の副担任をしている。
高校時代の俺が聞いたら唖然とするだろうな。
教師になって、よりにもよって北高で働いてるなんてな。

 

14 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/22(金) 23:52:27.37 ID:GxH6TDNP0

それに国語の教師になった今でも古文はあまり好きになれない。
センター試験レベルの問題だと今でもたまに間違えてしまう。極めて稀なことにだ。
それにいくら教師になったからといって俺の元々の性格が変わったわけではない。
自分で教師になることを選び、北高で働くことに決めた。俺は俺だ。
その証拠に、「キョン先生!おはよう〜!」「おぉキョンじゃん。はよざーす!」
いまだにキョンと呼ばれ続け、しかも微妙な敬語で挨拶される。教師ではなく生徒に。
そう、これが俺だ。高校時代からたいして変わって無い俺なのだ。

 

15 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/22(金) 23:53:21.90 ID:GxH6TDNP0

午前8時25分。学校につき俺は職員室へと向かう。
キョン「おはようございます。」
教師1「おはよう。毎朝あの坂をご苦労だね。」
キョン「いえ。もう慣れましたから。」
教師2「おぉ。おはよう。」
キョン「おはようございます。」
挨拶をしながら俺は自分の机へと着く。
机の上は「高校1年 現代国語」と書かれた教科書や、「古文 動詞の活用」と銘打たれたプリントなどものであふれている。といっても俺の机だけじゃない。
他の先生の机も似たようなもんだ。
俺の隣の机も資料やプリントがうずたかく積まれている。
その資料の山の脇から見知った顔がひょっこり出てくる。
国木田「キョン。おはよう。」
キョン「おはよう。お前今日は早くないか?」
国木田「ちょっとやることがあってね。」

 

19 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/22(金) 23:55:26.36 ID:GxH6TDNP0


腐れ縁もここまでくると運命と名前を変えるのかもしれない。
国木田も北高で教師をしている。教科担当は数学。2年理系コースの副担任だ。
俺と国木田は中学、高校、大学、さらに社会人となっても同じ場所で日々を過ごしていた。
高校3年の冬、俺は自分自身の努力とハルヒが作った俺専用センター対策プリントのおかげで、最後の模試で地元の国立大学の教育学部B判定が出るほど学力が向上していた。
国木田は俺の第一志望校なんかは余裕でA判定だった。
俺でも名前を知っている某有名大学がB判定という恐ろしいほどの成績だった。
ハルヒは志望校の欄に俺と同じ大学の法学部を第一志望に書いて、それ以外は何も書いていない。成績にあった大学に行く気なんかは更々なかったらしい。
そしてハルヒもA判定だった。しかも偏差値をみると国木田よりも上だったから驚きだ。
「涼宮さんはすごいな〜」と国木田が苦笑いしていたのはなかなか印象的だったな。
ちなみに谷口はというと、D判定だった。

 

20 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/22(金) 23:56:15.89 ID:GxH6TDNP0

だが模試の判定通りにいかないのが大学受験というものだ。
国木田はセンター本番でブレーキしてしまい、俺は今までにないくらい好調だった。
結果として、いつも100点以上点数に差がある俺と国木田の成績はほとんど同じ点数に
なってしまった。
結局国木田は俺と同じ地元の国立大学の教育を受けることになった。
そんなこんながあって二人とも留年することなく大学を卒業し、国木田は本採、俺は仮採用で二人とも北高で働くことになった。
国木田「そういえばキョン。朝から4組の日直の子が日誌取りに来てたから渡しといたよ。」

 

21 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/22(金) 23:57:07.63 ID:GxH6TDNP0

いまだに俺がキョンというあだ名でよばれているのは多分にこいつの責任が大きい。
国木田は生徒の前だろうが他の先生の前だろうが構うことなく俺のことをキョンと呼び続けた。そのせいで一時期俺と国木田は女生徒の間で、あること無いこと噂されていた。
噂の内容は推して測るべしだ。さらに俺が北高に赴任した時、生徒として妹と美代吉がいた。
これが更に事態を悪化させることになる。
妹も学校だろうが構わず俺のことをキョンくんと呼び続けた。
俺のことをお兄さんと呼んでくれたのは美代吉だけだ。
キョンくん、キョンと二人から呼び続けられたことで生徒の間での俺のあだ名もキョンで定着した。先生をつけずに呼び捨てにする奴もいるくらいに。
妹のことを知らないはずの今年の新入生からも、すでに俺はキョンと呼ばれている。
これは親しみがあると喜ぶべきなのか、舐められていると怒るべきなのかは俺には分からない。それに生徒と良好な関係を築く上でこのあだ名が役に立っていることは否定できない事実だ。
まぁ、これも人徳の成せる技…だと思いたい。

 

22 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/22(金) 23:58:01.87 ID:GxH6TDNP0

午前8時55分。朝礼を終え俺は1−4の教室へと向かう。
本来副担任は朝のHRには出なくてもいい。
しかし、担任である体育教師がただいま入院中なのだ。
というわけで副担任である俺が一時的に1−4の担任をすることになった。
HR時間ギリギリだというのに、廊下にはまだまだ生徒がいる。
キョン「お〜いお前ら。ホームルーム始まるぞ。教室入れ。」
「キョンだ。おはよう。」「げ。来るのはえ〜よ。キョン。」
キョン「いいから早く教室入れ。プリント配んなきゃいけないんだから。」
文句を言いながらも教室に入っていく。
なんのかんの言ってもみんなまだまだ高校生なのだ。

 

24 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/22(金) 23:58:53.98 ID:GxH6TDNP0

俺は生徒に敬語を強制した事はない。
そういう社会のルールは高校を卒業した後でも十分に学べる。
高校を卒業したらそういったルールは絶対に学ばなくてはならない。
まだ子供でいられる最後の期間。俺はそれが高校時代だと思っている。
だからこそ俺は生徒に自分の思うままでいてほしいと思う。
将来を決める大事な3年間を他人の顔を窺いながら過ごし、自分を見失って欲しくない。
とはといっても「げ」はないだろ。「げ」は。あまりにあけすけ過ぎるのも少し問題だな。
教室に入るが俺が来てもお構いなしに生徒は騒いでいた。やはり少しへこむな。
ちょっとは注意すべきなのか?
本来の担任である体育教師が教室に入ると、この教室は水を打ったかのように静かになる。
静かでないと鉄拳が飛ぶからだけど。それも男子限定で。

 

25 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/23(土) 00:00:15.50 ID:60Wl2Hdc0


キョン「全員席着け〜!朝のHR始めるぞ〜!」
こうやって呼びかければ、騒がしいながらもみんなちゃんと席に着いてくれる。
日直「起立。きょうつけ。礼。」
キョン「よし。みんなおはよう。全員来てるか?」
生徒「霧島がまだ来てませーん。」
教室を見渡すと、校庭に面した窓際の1番後ろ。その前の席は、高校時代に何回席替えしても1年間変わることがなかった俺の席。
そこが空席だった。そのことに生徒のだれも驚きはしない。もちろん俺もだ。
その席の主である霧島は遅刻の常習犯だからだ。
新入生が入ってきてまだ2か月だが、霧島はもう優に20回は遅刻している。
いくら担任が注意しても、3日後にはまた遅刻する。それに今はうるさい担任もいない。

 

26 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/23(土) 00:01:36.40 ID:60Wl2Hdc0

キョン「霧島は今日も遅刻か…」
出席簿に△マークを書こうとしたその時、
ガララッ!!と大きな音を立て教室の後ろのドアが開く。
クラス全員の視線がそこに注目する。
霧島「はぁ…はぁ…セーフでしょ。キョン。」
肩で息をしながら霧島が俺に聞く。おそらくあの坂を走ってきたのだろう。
本当にきつそうだ。
キョン「セーフもなにもHRは始まってるんだけどな。」
その頑張りを認め、遅刻は撤回する気だが少し意地悪を言いたくなってしまう。
遅刻常習犯相手にこの程度の意地悪は許されるだろう。

 

27 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/23(土) 00:03:42.41 ID:60Wl2Hdc0

午後1時30分。俺は今1−4組での授業中だ。昼休みの後の5時間目。
さらに月曜日の4時間目は体育。こんな最悪のコンディションの授業だ。
まともに授業を聞いているのは何人かしかいない。
他の連中は寝ているか、起きていてもボーっとしているかのどちらかだ。
単元のまとめなので中間テストに出すところをチラホラ混ぜながら授業しているのだが…。
高校時代に自分ができなかったことを生徒たちにやれというのも心苦しいものがある。
それにどうせテスト前には生徒間でノートの見せ合いが行われる。だからたいして心配はしていない。少し俺の心が痛いだけだ。
と、ここで霧島と目が合う。最近気づいたんだがあいつとは授業中やけに目が合う。授業はあんまり寝ないんだよな。寝ているところ見たことないし。
霧島「…(プイッ)」
あいつ目を逸らしやがった。朝のことまだ根に持ってんのか?
でも数少ない授業を聞いてくれている生徒の一人だ。それくらいの無礼全然気にしてない。
あぁ気にしていないともさ!!

 

28 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/23(土) 00:04:52.72 ID:60Wl2Hdc0

午後4時45分。帰りのHRを終えた俺は部活棟に向かう。俺はある部活の顧問をしていた。
千春を迎えに行かなくてはいけない俺は本当なら部活の顧問なんて
ボランティア行為しないほうがいい。だがある生徒から頼まれた。
自分が所属する部活が顧問不在で廃部になろうとしていること。
だから俺に顧問をしてほしいということ。
俺は自らの家庭事情を話した。そして部活には毎日顔を出せない、来ても6時前には帰らなければいけない。それでもいいなら顧問をしてもいいと俺に都合のいい条件を提示した。
その生徒はそれでもいいと言ってくれたので俺は晴れてその部活の顧問になった。
それに俺はこの申し出に対して運命めいたものを感じていた。
その部活のことは北高に働き出したときから気になっていた。
でもその時は顧問もいたし部員も何人かいたから俺ができることはなかった。

 

29 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/23(土) 00:05:55.06 ID:60Wl2Hdc0

だがこの部活が廃部の危機に瀕している。そして助けを求めているのだ。
それにもし廃部なんかになったらハルヒと某宇宙人からどんな目にあうかわかったもんじゃない。3年間で1番多くの時間を過ごした部室の前に着く。
その部屋のドアの上には「文芸部」の看板が下がっていた。
キョン「陸奥。いるか?」
陸奥「います。こんにちは。…今日は少し遅いですね。」
キョン「先週話しただろ?今臨時で担任してるって。だから俺がHRしなくちゃいけないんだ。」
陸奥「そうでした。お茶は何がいいですか?」
キョン「緑茶でいいよ。」
陸奥「わかりました。」
―陸奥ゆうき。文芸部部長兼お茶くみメイド…ではないが、
いつも俺が来るとお茶を出してくれる。

 

30 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/23(土) 00:06:58.07 ID:60Wl2Hdc0

部室には文芸部なのに冷蔵庫、コンロ、パソコンまである。
我らの団長が高校生のころに持ち寄ったり奪ったりしたものだ。
陸奥「はい。先生お茶です。」
キュン「おう。ありがとう。そういや陸奥。」
陸奥「なんです?」
キョン「いつもどんなお茶がいいか聞いてくるけど緑茶以外もあるのか?」
そのとき陸奥の目が光った―ような気がした。
陸奥「あります。そもそも先生はいつもいつも緑茶といいますが緑茶にも色々種類がありまして」
キョン「ちょっと待て陸奥。その話長くなる?」
陸奥「話そうと思えば2時間は話せます。」
意外だ。陸奥にこんな趣味があったとは。
というか陸奥がこの趣味を持つことになる原因を俺は知っているかもしれない。

 

31 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/23(土) 00:07:55.32 ID:60Wl2Hdc0

部室には文芸部なのに冷蔵庫、コンロ、パソコンまである。
我らの団長が高校生のころに持ち寄ったり奪ったりしたものだ。
陸奥「はい。先生お茶です。」
キュン「おう。ありがとう。そういや陸奥。」
陸奥「なんです?」
キョン「いつもどんなお茶がいいか聞いてくるけど緑茶以外もあるのか?」
そのとき陸奥の目が光った―ような気がした。
陸奥「あります。そもそも先生はいつもいつも緑茶といいますが緑茶にも色々種類がありまして」
キョン「ちょっと待て陸奥。その話長くなる?」
陸奥「話そうと思えば2時間は話せます。」
意外だ。陸奥にこんな趣味があったとは。
というか陸奥がこの趣味を持つことになる原因を俺は知っているかもしれない。

 

32 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/23(土) 00:08:50.47 ID:60Wl2Hdc0

キョン「お前どうしてそんなお茶に詳しいんだ?」
陸奥「それは…この部室にあったノートを読んだからです。」
やはり。朝比奈さんがせっせと書いていたお茶の入れ方ノート。まだ残ってたんだな。
陸奥「これです。でも凄いんですこのノート。多分個人で作ったんだろうけど。お茶の種類から入れ方までとても細かに書いてて。お茶の教科書みたいな感じです。」
辛口の陸奥にここまで言わせるなんて。流石は朝比奈さんだ。
陸奥「これを書いた人は本当にすごいと思います。日本茶に中国茶に紅茶。有名なお茶だけでなくて、マイナーなお茶まで網羅してるんです。」
…どうも陸奥は俺にお茶の講釈を受けて欲しいらしい。今まで俺が無知なせいで、
折角朝比奈さんノートで学んだ技術や知識を生かせなかった訳だからな。
ここは俺自身のため、それになにより陸奥のためにも、授業を受けるとしようか。
キョン「じゃあ陸奥。緑茶にはどんな種類があるんだ?」
陸奥の目が光る。今度は間違いなく光った。
陸奥「はい先生。まずは有名な玉露です。玉露は新芽を20日間干して作るもので」
教師である俺がたまには授業を受けるのもいいかもしれない。

 

33 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/23(土) 00:10:17.83 ID:60Wl2Hdc0

午後5時50分。職員室で霧島を待たせ俺は電話をしている。
キョン「…というわけで悪いけど千春のお迎え頼めるか?」
???「あぁ。別にかまわないよ。それよりもキョン。」
キョン「なんだ?」
???「叱るだけが教育じゃない。何より相手は精神的に未熟な高校生だ。事情も聞かずに怒るような無知蒙昧なことだけはしないようにね。」
キョン「分かってるよ。それに俺もまだまだ精神的には未熟だからな。叱るなんてことできるかよ。」
???「それくらい謙虚なほうが教師として丁度いいと思うよ。それじゃ千春のお迎えは任せてくれ。」
キョン「いつもすまないな。」
???「さっきも言っただろう?別にかまわないと。じゃあ切るよ。千春を待たせても悪いから。」
キョン「分かった。じゃあ頼むな。」
???「あぁ。」
ふぅ…。これで千春のことはどうにかなった。問題はこれからだな。

 

34 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/23(土) 00:11:34.57 ID:60Wl2Hdc0

キョン「霧島。なにがあったんだ?」
霧島「…」
だんまりか。こりゃ長くなりそうだな。
キョン「お前が話してくれないと俺もお前も帰れないわけだが。」
霧島「うるさいわね。キョンのくせに。」
キョン「話してくれないなら仕方ない。俺から一方的に話すぞ?」
霧島「…」
沈黙は肯定とみなそう。でなけりゃ話が進まん。
キョン「事情はわからないけど、先に手を出したのはお前みたいだな?」
霧島「…」
キョン「その男がおまえに何したかは知らん。女に殴られたくらいだ。相当くだらないことしたんだろうと思う。」
霧島「そうよ!あのば…」
キョン「けどな霧島」
俺は霧島の言葉をさえぎる。

 

35 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/23(土) 00:12:26.22 ID:60Wl2Hdc0

キョン「俺はどんなことがあったとはいえ暴力は認めない。今まで何回も聞いてきたことかもしれないけど、先に暴力振るったほうが負けなんだよ。大人の世界ではな。」
霧島「でもっ!」
キョン「でもとかだってが通用するのは子供の間だけだ。大人なったらそれはただの言い訳になるんだよ。分かるか。」
霧島「分かる…わよ。」
キョン「じゃあ自分がどんなに馬鹿なことしたかも分かるよな?」
霧島「分かるわよ!分かるけど!」
キョン「けど?」
霧島「納得できるわけないじゃない!」
キョン「そうだろうな。でも今はそれでいいんだよ。」
霧島「え?」

 

36 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/23(土) 00:14:12.83 ID:60Wl2Hdc0

キョン「正直俺もこの理論は今でも納得できない。事情も知らないのに先に殴ったら悪いとかあほらしいよ。
でもこんなあほらしい理論に大人なると縛られちまう。納得するしないに関わらずにな。でもお前は子供なんだ。
だからまだ大人のルールを守る必要はない。そのルールにもどうせ少しずつ慣れていくんだから。
今のお前くらいの年ごろは自分が正しいと思ったことをやってりゃいいんだ。もちろん人様に迷惑かけなければだけどな。」
霧島「…じゃない。」
キョン「なんか言ったか?」
霧島「子供じゃないっていったの!!この馬鹿キョン!!」
キョン「ぐおっ!いきなり叫ぶなよ!驚いたじゃないか!」
霧島「私が喋ろうとしたのを邪魔したからよ!」
キョン「あれはだ。お前がなんか色々愚痴を言いだそうとしていたから…」
霧島「ふんっ!そんなの言い訳にすぎないわよ。」
キョン「ぐっ…」
霧島「キョンのくせに私に説教なんて100年早いわよ!」
こんなこと言ってはいるが、こいつなら分かってくれたと信じている。
なぜなら今霧島が笑ってくれているからだ。

 

37 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/23(土) 00:15:03.79 ID:60Wl2Hdc0

午後6時20分。家までの道を全力で駆ける。
今なら帰る途中の二人に合流できるかもしれない。
キョン「はぁ…はぁ…。流石にきついな。」
走るスピードを緩めようかと思っていたその時。手をつないだ二人の後ろ姿が目に入る。
どうやら追いついたみたいだ。
キョン「お〜い!!千春!佐々木!」
小さいほうの影が振り向く。そしてその影が俺に向かって全速力で走ってくる。
大きい影も俺の存在に気づいたようだ。
千春「お父〜〜〜〜〜〜〜さ〜〜〜〜〜〜〜ん!!!お帰り〜〜〜〜〜〜!!!」
ボスンッ!!!そのままの勢いで千春が俺の腹に突っ込んでくる。

 

38 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/23(土) 00:15:52.83 ID:60Wl2Hdc0

キョン「ただいま!!千春!!」
俺は千春を抱きかかえる。
佐々木「お疲れさま。キョン。」
キョン「あぁ。お前もお疲れ様。お迎えありがとな。」
佐々木「何度言えば分ってくれる?礼なんていらないよ。」
ハルヒを亡くし、その代りに千春を得たあの日から5年間。
佐々木は育児の“い”の字も分からない俺を何の見返りも求めずに手伝ってくれた。
今でもこうして仕事が忙しい時には千春のお迎えを頼んでしまう。
晩御飯を作ってくれる時もある。だが俺がお金を渡そうとしても絶対に受け取らない。
お礼なんて100回言っても足りないくらいなのに。

 

39 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/23(土) 00:16:38.42 ID:60Wl2Hdc0

佐々木「それより千春が君に見せたいものがあるそうだよ。ね?千春。」
千春「うん!そうだよ!見てお父さん!!」
幼稚園の黄色い鞄から丸まった紙を出す。
紙には「おとうさん」という文字とクレヨンで俺と千春の二人が描かれていた。
昔の俺はテレビドラマで今の状況に似たシーンを見ていた時「いくら娘が描いてくれ
た絵だからってこんな泣いたりしないだろ…」とか思っていた。だが今の俺はどうだ。
目に涙がたまる。言葉が出せない。千春の気持が嬉しくて。娘という存在が愛おしくて。
そして母親の絵を描かせてあげられないことが少しだけ哀しくて。
千春「どうしたの?お父さん?嬉しくない…?」
千春が悲しそうに顔を曇らせる。そんなことあるはずないのに。
キョン「何いってんだ千春!!嬉しいに決まってるよ!!千春は絵が上手だな!!」
俺は千春を力の限り高い高いする。少しでも多く俺の気持ちを伝えたい。
伝える方法なんて分からないけど。それでも伝えたいんだ。
君がいてくれるだけでどれだけ救われているか。生きていることを実感できるか。
言葉なんて安いものじゃきっと伝えきれない。だから精一杯高い高いする。

 

40 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/23(土) 00:17:25.65 ID:60Wl2Hdc0

千春「嬉しい?本当に?やった〜〜〜!!」
佐々木「私が見せて欲しいと言っても見せてくれなくて。こういう訳だったんだね。」
千春「お姉ちゃんごめんね…。でもお父さんと約束したの。絶対1番に見せるって。」
佐々木「いいんだよ千春。約束は守らなくちゃいけないから。偉いよ千春。」
佐々木が千春の頭を撫でる。とても優しくまるで自分の娘のように。
千春「えへへへ〜。千春偉い?」
千春は佐々木のことを「お姉ちゃん」と呼ぶ。誰かが呼べと言ったことはない。
千春は自然と佐々木をお姉ちゃんと呼ぶ様になっていた。
生まれた時から俺と佐々木の二人で子育てをしてきたが佐々木のことを「お母さん」と呼
ぶことは1度も無い。
佐々木「うん。偉いよ。約束を守るのはとても大事なことだから。」
佐々木は千春の前で言葉遣いが変わる。
佐々木曰く「自分の話し方は千春の情操教育上良くない」のだそうだ。
今は男女平等の世の中だぞと言ったら「そうかもしれないけど千春には女の子らしくなっ
てほしいんだ。」と言われて俺はその教育方針に同意した。

 

42 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/23(土) 00:18:38.04 ID:60Wl2Hdc0


キョン「よし。千春!佐々木!晩御飯の買い物して帰ろう!」
佐々木「そうだね。キョン、千春。晩御飯は何がいい?」
千春「え〜と…ね。」
千春がチラッと俺の顔を窺う。俺が何を食べたいのか気にしているみたいだ。
キョン「千春が食べたいものならなんでも。」
だから俺は先に食べたいものを言う。それに佐々木が俺たちのために作ってくれる料理だ。
どんなものだろうが俺は残さず完食する自信がある。
佐々木「だってよ。千春。」
千春「じゃあね!オムライスがいい!」
佐々木「オムライス…。作るの久しぶりだ。大丈夫かな?」
キョン「大丈夫に決まってる。お前が作るんだから。」
佐々木「…ありがとう。お世辞でも嬉しいよ。」
表情に出さないよう努めているようだが、少しだけ微笑んでくれている。

 

43 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/23(土) 00:19:29.38 ID:60Wl2Hdc0

こんな臭いセリフも言える、俺と佐々木の関係。人が見たらなんと言うだろう。
変だ、おかしいと言う人もいると思う。俺が言えるのは俺と千春には佐々木が必要だ。
それだけだ。裏も打算も何もない。それだけなんだよ。
千春「お父さ〜ん!お姉ちゃ〜ん!早くお買い物行こうよ!」
千春が笑顔で俺と佐々木の手を引っ張る。
キョン「あぁ!俺も走ってお腹すいたし。急ごう!」
千春の手を持ち上げて俺が走り出す。佐々木も俺に合わせて千春を持ち上げ走る。
千春「キャ〜〜〜〜!!!!」
すると自然千春の体が俺たちの間で浮き上がる。千春の重さを手に感じる。
佐々木と二人で持ち上げた重さ。俺が守るべきものの重さ。ハルヒが生きた証の重さ。
その重さを感じつつ、俺達は笑いながらスーパーへの道を走った

 

44 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/23(土) 00:20:33.85 ID:60Wl2Hdc0

午後730分。
佐々木「千春。お皿並べてくれる?」
千春「は〜い!オムオムライス♪オムライス♪」
佐々木は週に3回は我が家に来て晩御飯を一緒に食べる。多い時では週5回。
材料費は全額俺持ちと言いたいとこだが、佐々木は割り勘以外を許してくれない。
千春「おねえちゃ〜ん。どのくらいのお皿がいい?」
佐々木「えぇとね…。棚の真ん中の青のお皿を三枚とスープのお皿を三枚お願い。」
千春「は〜い!!」
我が家のことについて俺だけ知っていて、佐々木が知らないことなど多分存在しない。
食器の位置、冷蔵庫の中身、洗剤をどこにしまったか、電球が切れていた部屋、光熱費、俺のお気に入りのネクタイ、千春が嫌いな食べ物。
…いやもしかしたら俺より詳しいのかもしれない。

 

45 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/23(土) 00:21:51.98 ID:60Wl2Hdc0

佐々木「千春、サラダの盛りつけもお願いしていい?」
千春「ツナいっぱいいれていい?」
佐々木「いいけど缶かん1個までね。」
千春「うん!!」
千春は父親がだらしなかったせいか、佐々木の教育がうまくいったかのどちらかは
わからないが5歳とは思えないほど家事が上手だ。
休みにはよくホットケーキやクッキーといったお菓子を佐々木と作っている。
千春が初めて作った少し歪な形のクッキーは俺の「DVD 永久保存版・千春ベストアルバム〜4歳編〜」に映像と写真で保存されている。
千春「おねえちゃん!サラダ出来たよ。」
佐々木「こっちも…出来上がりと。千春お父さん呼んで。」
呼ばれなくても、さっきから全部聞こえてるんだけど。

 

47 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/23(土) 00:23:04.25 ID:60Wl2Hdc0


千春「お父さ〜〜ん!!ごは〜〜〜〜〜ん!!!」
キョン「はいは〜い。今行くよ。」
チキンライスの少し酸っぱい香りとスープの匂いが俺の腹の虫を騒がせる。
俺も我慢の限界だ。
「はやく〜〜〜。」「ごめんごめん。お腹減ったよな。」「二人ともスープどれくらい?」
「たくさん!!」「並で!!」「はいはい。」
少しだけ騒がしい我が家の晩ごはん。
「はい二人とも。じゃあ手を合わせて。」
「「「いただきま〜す!!!」」」

 

48 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/23(土) 00:23:53.97 ID:60Wl2Hdc0

午後9時30分。晩御飯を食べ終わり、俺と千春は一緒にお風呂に入り、
佐々木が絵本を読んであげて千春を寝かしつけた。今日も1日の終わりが近づいている。
俺と佐々木はリビングのテーブルで向かい合ってコーヒーを飲んでいる。
俺はミルクだけ。佐々木はブラック。
キョン「こんな時間にブラック飲んで大丈夫か?」
佐々木「いいさ。いくら寝ても癒されない疲れもある。」
キョン「…そうか。」
佐々木の話し方も昔と比べると少しわかりやすくなって、そして何を考えているか
倍分からなくなった。

 

49 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/23(土) 00:24:37.23 ID:60Wl2Hdc0

キョン「今日はどうする?泊まるか?」
こういう下世話な話はあまりしたくないが、俺と佐々木に肉体的関係は一切無い。
俺達二人の間の「泊まる」という言葉にそういった意味は含まれていない。
佐々木「いや今日は帰る。明日も仕事があるから。」
キョン「そうか。送ろうか?」
佐々木「何回言ったかわからないけど千春を一人にするのかい?」
キョン「そうだけど…やっぱり泊って行けよ。危ないし。」
佐々木「いや今日は帰らせてもらうよ。」
キョン「どうして?」
佐々木「…危なくないから。」
キョン「いやだから泊まって」
佐々木「帰るよ。仕事をおろそかにしてはいけない。社会人として当たり前のことだ。」
キョン「…分かった。」
こういう時の佐々木に何を言っても無駄だ。頑固なところは誰かさんにそっくりだから。
だから玄関先まで見送る。こんだけしかできない自分が虚しい。

 

50 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/23(土) 00:25:23.87 ID:60Wl2Hdc0

佐々木「じゃあまた」
キョン「あぁ。また明日…かは分からないけどまたな。」
こいつとの別れはいつもこんな感じだ。さっきまで過ごしていた時間が嘘のように。
キョン「佐々木」
佐々木「なんだい?」
キョン「…いや…気をつけてな。」
佐々木「分かってるさ。」
俺は今何が言いたかったのか。それは言ってはいけない言葉だったかもしれない。
それを言えばすべてが終わってしまう破滅の言葉。
何かを犠牲にしなければ何も得られないという言葉がある。
だが犠牲にしてはいけないものもあると俺は信じている。
たとえそれを捨てて得るものがいかに素晴らしいものであっても。

 

51 名前: VIPがお送りします 投稿日: 2009/05/23(土) 00:26:29.68 ID:60Wl2Hdc0

午後11時45分。
キョン「くぁ…」
明日の授業の準備も終わり、そろそろ眠くなってきた。今日も終わりだな。
いい1日だった。俺も千春も佐々木も霧島も陸奥もみんな笑顔だった。
なぁどう思う?俺は千春に寂しい思いをさせてないか?
千春はお前に似て強がりだからな。無理してないかな?
俺頑張るからな。見ててくれよハルヒ。
俺は天にいるだろうあいつに誓う。千春のため。俺のため。
帰ってくる言葉は無かった。